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産婦人科専門医による妊活ガイド

ヒューナーテストについて産婦人科医が詳しく解説します

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ヒューナーテストの結果が悪かったらどうする。

 ヒューナーテストは、性交後試験とも呼ばれています。ヒューナーさんが始めたのでヒューナーテストです。産婦人科医は、英語の頭文字からPCT(ピーシーティー)と言っています。

 結果が良ければ問題ないのですが、結果が悪かった時にどう判断するかは、実はかなり難しいのです。

ヒューナーテストとは

 排卵日近くに子宮の入り口に出てくる頸管粘液と精子の相性を調べる検査です。

 精液検査で精子の数や動きに異常がなくても、性交渉の後、子宮の入り口で精子が動かなくなってしまうと、受精の場の卵管に精子がたどり着かなくて妊娠できません。

 性交渉をした後に、子宮の入り口にある頸管粘液の中に、元気な精子がいるかを検査するのがヒューナーテストです。。

検査のタイミング

 排卵の直前にすることが重要です。今までの生理の周期、基礎体温などから排卵日を予測して、排卵日の直前に検査します。

 検査の前日の夜に性交渉をして、9~14時間後に検査をします(世界保健機関のラボマニュアルにより)。夜勤などで夜に性交渉ができない場合、検査当日の朝に性交渉をするのでもいいと思います。

 検査の前、2~4日間は性交渉をしないでください。前日の性交渉の後は、シャワーはいいですが、入浴はしないでください。

 膣の中に出た精子は、頸管粘液が出ていないと2時間くらいで動かなくなってしまいます。排卵前に頸管粘液が出ていると、頸管粘液の中では精子が動き続けることができます。

検査の方法

 頸管粘液を注射器で吸い取って、スライドガラスにのせて顕微鏡で見ます。

 見える範囲で、元気な精子が1個でもいれば、ヒューナー検査は異常ないと診断できます。

 病院によっては、元気な精子が10個以上いないと、異常と診断されることがあると思います。そいうふうに書いてある教科書もあります。

 元気な精子が何個以上なら異常なしと判定するかは、はっきり決まっていないのが現状です。

 世界保健機構のラボマニュアルには、元気な精子が1個でもいれば、ヒューナー検査は異常ないと診断できると書いてあるので、今のところこれが基準になると思います。

 ヒューナーテストは、たまたま結果が悪かったということもよくあるので、元気な精子がいなかった場合は、次の排卵日前に再検査します。

 また、超音波で卵胞がまだ排卵直前の大きさではない・頸管粘液が少ないなどで、排卵直前ではないと判断された場合は、数日後に再検査することもあります。

結果がわるかったらどうなるの?

 排卵日直前に何回か検査しても元気な精子がいないなら、ヒューナーテストが異常だと診断されます。

 ちゃんと性交渉しているのに、頸管粘液の中に精子がまったく見当たらないなら、無精子症の可能性があります。精液検査で精子がいるか確認しましょう。射精ができない可能性もありますね。

 精子はいるけれど、もぞもぞしているだけで元気に動いていなければ、抗精子抗体という精子の動きを悪くしてしまう抗体がある可能性があます。採血で抗精子抗体があるか検査します。

 元気に動いている精子がいない場合は、受精の場となる卵管まで精子がたどり着かないと考えられるので、抗精子抗体があるなしに関わらず人工授精が必要になります。

 抗精子抗体の数字が高い場合は、精子の動きが悪すぎて、人工授精でも妊娠しにくいので、体外受精(顕微授精)が必要になります。

男性の抗精子抗体

 男性が抗精子抗体を持っているために、ヒューナーテストの結果が悪いこともあります。
 男性が抗精子抗体を持っている場合は、人工授精が必要になりますが。ヘミゾナアッセイという、卵子の周りにあるタンパク質(透明帯)と精子がくっつくか調べる検査をして、ダメな場合は顕微授精が必要になります。

 ヒューナーテストが異常でも、自然妊娠することもあるので、ヒューナーテストの意義を疑問視する意見も少なからずあります。アメリカやヨーロッパの不妊学会では、ヒューナーテストを不妊症検査として行うことは推奨していません。

まとめ

 ヒューナーテストを受けた方も多いと思います。日本では多くの病院でやっていると思います。私の病院でもほぼ全員に検査しています。

 男性がイヤがって精液検査を受けてくれないというケースもあると思います。そんな時にはヒューナーテストが精液検査の代わりになることがあります。ヒューナー検査で元気な精子がいっぱいいれば、精子の状態は大丈夫と考えてよいと思います。元気な精子がいなければ、説得して必ず精液検査を受けてください。

 ヒューナー検査が異常なら、人工授精になります。抗精子抗体の結果によっては顕微授精が必要になります。

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