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産婦人科専門医による妊活ガイド

不妊症の検査として子宮鏡をする価値はあるのか

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体外受精をする前に子宮鏡検査をした方がいい?【産婦人科医が解説】

 1cm以上子宮内膜ポリープや粘膜筋腫がある時は、子宮鏡手術で取った方が妊娠しやすくなるというお話をしました。

 超音波やMRIで大きなポリープや筋腫が見つかった場合には、受精卵が子宮に着きにくくなっている可能性があるので、子宮鏡下手術をします。

 超音波では子宮の中に特に異常がない場合に、子宮の中に本当に異常がないか子宮鏡で検査する必要はあるのでしょうか?

子宮鏡の役割

 子宮の中(子宮内膜)の異常が不妊の原因となっていることがあります。

 子宮内膜ポリープ・子宮筋腫・子宮奇形などです。受精卵が子宮に着くことのじゃまになって妊娠しにくくなります。

 子宮の中の異常を調べる方法としては、超音波・子宮卵管造影などがあります。

 ただし、超音波・子宮卵管造影では子宮内膜の異常を見逃してしまうことが、少なからずあると言われています。

 子宮鏡をすれば子宮の中の異常が正確に診断できると考えられます。

超音波・子宮卵管造影での見逃しはどのくらいあるのか

 超音波では、

  • 子宮内膜とポリープ・筋腫の区別がつきにくい
  • 筋腫の数が多いと分かりにくくなる
  • 子宮奇形の診断は難しい

などの理由で見逃しが起こります。

 見逃しの確率については報告によってバラツキが大きいですが、超音波や子宮卵管造影で異常なしと診断された人に子宮鏡をすると、10~40%に異常が見つかると報告されています。かなりの確率ですね。

体外受精の前に子宮鏡をすると妊娠率が高くなるか

 日本産科婦人科学会の産婦人科診療ガイドラインには、不妊症の一次検査(妊娠しないということで受診した人に、最初にする検査)として子宮鏡をすることは勧めていません。

 海外でも同様だと思います。

 なので、検査としての子宮鏡の価値を調べた研究のほとんどは、体外受精に進む前、もしくは何回か体外受精で妊娠しなくて着床がうまくいっていない可能性がある人に子宮鏡をする価値はあるのかというものです。

 ヒューマン・リプロダクション・アップデートの論文をご紹介します。

妊娠率

 体外受精をする前に子宮鏡をした人(異常が見つかればその治療もしています)は、子宮鏡をせずに体外受精に進んだ人に比べて、妊娠率が1.5倍になりました。

 何回かの体外受精で妊娠しなかった人に子宮鏡をした場合、しない人と比べて次の体外受精の妊娠率が1.4倍になりました。

生児獲得率

 体外受精に進む前や何回か体外受精で妊娠しなかった人に子宮鏡をした場合、しない人と比べて生児獲得率が1.5倍になりました。

流産率

 子宮鏡をしても流産率は変わらないようです。

 妊娠率が1.5倍というのはかなりインパクトがありますね。

 体外受精で妊娠しなくて着床がうまくいかない人に子宮鏡をした方が効果が高いと思ったのですが、そうではないようなのは意外でした。

 子宮内膜に異常があると流産になりやすいと考えれられるのに、流産率に差がないというのも意外でした。超音波でわからず、子宮鏡でわかるような異常は妊娠することには影響するけれど、流産には影響しないということでしょうか。

妊娠率が高くなる理由は

超音波で見つからなかった異常を見つけて治療できる

 一番大きな理由は、上にも書いたように超音波で見逃していた異常を見つけて治療することで、妊娠しやすくなるということです。

 超音波での見逃しが10~40%あるとすれば、かなり効果が期待できますね。

子宮内の洗浄効果

 子宮鏡をするときには子宮の中に水(生理食塩水など)を流しながらやります。

 水を流していないとカメラにポリープや筋腫が当たってカメラが見えなくなります。

 水を流し続けることで、子宮の中が洗われて、受精卵が子宮に着くのをじゃましているような成分を流してしまうことができるのです。

子宮の入り口をスムースにする

 子宮鏡は5~8mmくらいの太さがあるので、子宮鏡をするときには前もって子宮の入り口を開く処置をすることが多いです。

 子宮の入り口に、周りの水分を吸って自然に太くなってくる細い棒をいれて、子宮の入り口を開くのです。

 この処置をすることで、子宮の入り口の通りがスムースになって、胚移植がしやすくなることで妊娠率が高くなると考えられます。

 子宮内膜に傷をつける

 子宮内膜を傷つけることで、妊娠しやすくなることがあるのは、こちらの記事で解説しました。

 子宮鏡を子宮の中に入れることで、同じような効果があると思われます。

まとめ

 日本では、体外受精に進む前に子宮鏡を必ずするという病院はほとんどないと思います。

 個人でやっている不妊クリニックでは、子宮鏡自体をやっていないところが多いです。

 晩婚化によって、早めに妊娠することを考えなければならないケースが増えています。

 今後は積極的に子宮鏡を行なって、子宮の中の異常を検査・治療していくようになるかもしれません。

 今でも、体外受精で良い受精卵を戻しても妊娠しなくて、着床に異常が疑われる時には、子宮鏡を考えてもいいのではと思います。

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