原因

多嚢胞性卵巣症候群〜普段の生活で気をつけること

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多嚢胞性卵巣症候群と環境ホルモン・食生活などの関係

 多嚢胞性卵巣症候群は遺伝が関係している可能性があることはこの記事で解説しました。

多嚢胞性卵巣症候群は遺伝するのか〜兄弟は若ハゲになりやすい?

多嚢胞性卵巣症候群の人から生まれてきた女の子は多嚢胞性卵巣症候群なるか  多嚢胞性卵巣症候群の原因はまだわかっていません。ただし、多嚢胞性卵巣症候群には遺伝的なところがあるのではないかと考えられていて ...

 具体的な原因となる遺伝子は、まだはっきりわかっていません。

 排卵障害などの症状が出るのには、遺伝だけではなく環境の影響も大きいと考えられています。

 今回は、多嚢胞性卵巣症候群と環境の関係について解説します。

環境ホルモンと多嚢胞性卵巣症候群

ビスフェノールA

 ビスフェノールAは、ポリカーボネート、エポキシ樹脂と呼ばれるプラスチックの原料として使われています。

 ポリカーボネート製の食器や容器などからビスフェノールAが飲食物に溶け出したり、食品缶や飲料缶の内側にコーティングされたエポキシ樹脂からビスフェノールAが飲食物に溶け出すことで体内に取り込まれることがあります。

 ビスフェノールAには女性ホルモン作用があり、環境ホルモンの代表格といえます。

 動物実験によるとビスフェノールAは、卵子の成熟や卵巣からの女性ホルモンの産生に悪影響を与えてるとされています。またオスは精子が少なくなってしまいます。

 また、胎児期や乳幼児期にビスフェノールAの影響を受けると、注意欠陥多動性障害を起こす割合が高くなると報告されています。

 ちなみに、発ガン性に関しても懸念されていますが、明らかな発ガン性があるというデーターはないようです。

ビスフェノールAと多嚢胞性卵巣症候群

 多嚢胞性卵巣症候群の人は、そうでない人と比べて、血液のビスフェノールAが約1.5倍くらい高いというデーターがあります。また、ビスフェノールAの値が高いほど、男性ホルモンが高くなっています。

 動物実験では、生まれた後にビスフェノールAを与えると、多嚢胞性卵巣症候群と同じような状態になって、男性ホルモンも高くなったと報告されています。

 以上から、ビスフェノールAが多嚢胞性卵巣症候群の発症に影響している可能性が考えられています。

ビスフェノールAはどのくらい気にすればいい?

 ネットでは、ビスフェノールAが有毒物質であるとして危険を煽っている記事を多く見かけます。

 実際は、ビスフェノールAが含まれていない製品も多くなっているようなので、それほど気にする必要もないのかなと思います。

 子供の時、妊活中、妊娠中は

  • ポリカーボネート製プラスチック容器を電子レンジで使用しない( PCと表示のあるもの)
  • 缶詰(トマト缶・ツナ缶)の利用を減らす(ビスフェノールAを使っていないものもあると思います)

といったことに気をつけた方がいいかと思います。

食事と多嚢胞性卵巣症候群

炭水化物

 私の周りにも炭水化物を食べないようにしてるおじさんが結構います。人生折り返して先が見えると、急に健康に気をつけるようになりますね。たぶん、今さら遅いと思いますが。いやまだ遅くないかな?

 炭水化物を少なくするとなんとなく糖尿病にいい感じがするし、そうすると多嚢胞性卵巣症候群の体質も改善されるのではないかと思いますよね。

 でも、実際には炭水化物を控えるのが糖尿病にいいわけでもないようですし、多嚢胞性卵巣症候群の人の耐糖能異常にも影響はないようです。

ホエイプロテイン

 筋トレなどをしている人が飲んでいるプロテインの1種のホエイプロテインは、多嚢胞性卵巣症候群の人の耐糖能異常を悪化させて、男性ホルモンが高くなってしまうというデーターがあります。

肥満と多嚢胞性卵巣症候群

 肥満自体が多嚢胞性卵巣症候群の主な原因ではないと思いますが、肥満がある場合には体重を減らすことで多嚢胞性卵巣症候群の症状がよくなることが期待できます。

 体重を5~10%減らすと、男性ホルモンが低くなる・生理が順調になる・耐糖能異常がよくなるなどの効果が期待できます。

まとめ

 環境ホルモンの影響に関しては、議論の最中です。妊活中・妊娠中には気をつけた方がいいと思いますが、わかっている環境ホルモン物質は使われないようになってきているので、環境ホルモンにさらされるリスクも少なくなっています。

 あとは、やはり肥満ですが、日本人の場合には肥満の頻度はそれほど多くないです。

 普段の生活でこうすれば多嚢胞性卵巣症候群の体質が目に見えてよくなるという方法はないようです。

 多嚢胞性卵巣症候群とイノシトール(ミオイノシトール)の関係を調べた論文がたくさん発表されています。

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