原因

橋本病と不妊・妊娠の関係 〜産婦人科医が解説

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女性に多い橋本病 その妊娠への影響は?

 橋本病は甲状腺の病気です。正式な名前は慢性甲状腺炎です。

 女性の方が男性より10~20倍頻度が高いと言われています。報告によって差がありますが、成人女性の3~10%くらいの頻度です。妊婦健診をしていても、橋本病の人を時々みかけるので、めずらしい病気ではありません。

 女性に多い橋本病は、妊娠に影響があるのでしょうか。

妊活と橋本病

簡単に橋本病について

 甲状腺は甲状腺ホルモンを作っています。上の図のように、のどのところにあります。

 甲状腺ホルモンの働きは、わかりやすく言えば「体を元気にする」ということです。

 体温を保つ・内臓を動かす・心臓を元気にする・尿を出す・糖分を取り込むなどの働きです。もちろん胎児から大人になるまでの成長にも重要な働きをしています。

 橋本病は、甲状腺に関係する抗体(自己抗体)ができてしまって(自己免疫疾患のひとつです)、甲状腺に炎症が起きる病気です。

 甲状腺がはれてくることが多く、病気が進むと甲状腺の働きが悪くなります(25%くらい)。 

 自己抗体があることや、甲状腺ホルモンが少なくなることが、妊娠に影響する可能性があります。

橋本病の妊娠への影響

 橋本病の診断基準に、自己抗体陽性という項目があるので、橋本病と診断された人はほとんどが、甲状腺に関係する抗体を持っていることになります。

 甲状腺の自己抗体の、妊娠への影響をまとめた論文が、2016年6月のヒューマン・リプロダクション・アップデートにあったので見てみましょう。

橋本病の人は妊娠しにくいのか

 12の論文をまとめた報告です。橋本病(正確には甲状腺の自己抗体を持っている人です)700人と甲状腺の自己抗体を持っていない4176人のデータです。自然妊娠ではなくて体外受精の結果を解析しています。

妊娠率

 甲状腺の自己抗体を持っている人の妊娠率が47.1%、持っていない人の妊娠率が50.4%で、妊娠率には差がないということです。

採卵数・受精率・着床率

 ほとんどの論文が採卵数には差がないと報告しています。

 受精率は、甲状腺の自己抗体を持っているが69.6%、持っていない人が68.9%で、差がありませんでした。

 ただし、受精率に関しては、この論文では顕微授精で妊娠した人がが多く含まれています。甲状腺の自己抗体を持っている人は本当は受精しにくいけれど、顕微授精のおかげで受精できている可能性は否定できません。通常の体外受精での受精率の比較は、症例数が少ないのでできなかったとのことでした。

  着床率は、甲状腺の自己抗体を持っているが23.4%、持っていない人が23.1%で、差がありませんでした。

橋本病の人は卵巣予備能が低い?

 甲状腺の自己抗体を持っている人は卵巣予備能が低くなるという説がありました。

 早発閉経と呼ばれる45歳前に閉経状態になってしまう人は、甲状腺の自己抗体を持っている人が多いとされているからです。

 今回の論文では、採卵数が変わらないことから、甲状腺の自己抗体を持っている人は卵巣予備能が低いわけではないだろうと考えています。

 他に、甲状腺の自己抗体を持っている人は、そうでない人と比べてもAMHが低いということはなかったという論文があります。

 ただし、甲状腺の自己抗体を持っている人のほとんどは卵巣予備能は正常だけれども、ごく一部の人は卵巣予備能に大きく影響して早発閉経になってしまうという可能性は否定できません。

妊娠した後は

流産率

 12の論文のうち3つの論文が、甲状腺の自己抗体を持っている人は流産率が高いという結果でした。

 12の論文をまとめると、甲状腺の自己抗体を持っている人の流産率が20.3%、持っていない人の流産率が15.6%で、甲状腺の自己抗体があると流産率が1.4倍くらいになるという結果でした。

生児獲得率

 生児獲得率とは妊娠が続いて赤ちゃんが生まれる率です。

 甲状腺の自己抗体を持っている人は76.6%、持っていない人は81.6%で、甲状腺の自己抗体があると生児獲得率が低くなるという結果でした。

 生児獲得率が低くなる大きな理由は、流産になる率が高いからだということです。

なぜ流産率が高くなるのか

 その理由ははっきりわかっていないようです。

  1. 流産には免疫の異常が関係していることがあると言われているのですが、甲状腺の自己抗体を持っている人は、他の免疫システムにも異常がある可能性
  2. 甲状腺の働きが低下することが流産に影響している可能性
  3. 甲状腺の自己抗体を持っている人の年齢層が高い可能性

などが理由として考えられています。

流産しないようにする方法は?

 免疫の異常が流産に関係している可能性を考えて、甲状腺の自己抗体を持っている人にステロイド剤(免疫異常を調節する働きがあります)を飲んでもらうと、妊娠率・生児獲得率が高くなったという報告があります。

 甲状腺の働きが低下していことが影響している可能性を考えて、甲状腺ホルモンの薬(チラージン)を飲んでもらうと、流産率が半分になったという報告があります。

 いずれの報告も、症例数が少ないので信頼性は高くありません。流産を繰り返すようなら、このような治療を考えてもいいかもしれません。

まとめ

 橋本病の妊娠への影響をまとめてみました。妊娠しにくいということはなさそうですが、流産率は高くなる可能性があります。

 流産を繰り返すようなら、治療を考えましょう。

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