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AMHと卵巣予備能〜あなたは誤解していませんか?

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AMHが低いと妊娠できないの?

  「AMHが低い=妊娠できない」というイメージが広がっているように思いますが、皆さんはどうですか?

 AMHが低くてもちゃんと排卵して妊娠する可能性は十分あります。

 AMHとはどういうものなのか、この記事を読んでしっかり理解してください。

卵巣予備能とは

 妊活をしている人は「卵巣予備能」という言葉を聞いたことがあると思います。卵巣予備能という言葉の意味はなんとなくイメージできると思いますが、医学的にはっきり決められているものではありません。

 妊活においては「排卵するポテンシャルのある原始卵胞の数」とするのがわかりやすいと思います。

原始卵胞とは

 わかりやすいと言いましたが、原始卵胞ってなんのことかわかりませんよね。排卵する時に大きくなってくる卵胞の元になる小さな卵胞のことです。

 女性は生まれた時に卵巣に200万個の原始卵胞があります。原始卵胞は自然消滅していくものが多くて、生理が始まる頃には30万個くらいになります。そこから一ヶ月に1000個ずつ消滅していきます。35歳を過ぎると自然消滅するスピードが加速して閉経すると0になります。

 ちなみに女性が一生の間で排卵する卵子は400個くらいです。

AMH(抗ミューラー管ホルモン)とは

 ミューラー管とは胎児の中で子宮や卵巣の元になるところです。抗ミューラー管ホルモンというのは、ミューラー管が育たないようにするホルモンです。すなわち、AMHが出ると子宮や卵巣ができないので男性になるということです。「AMH=男性になるためのホルモン」です。

 女性では胎児の卵巣内で作られて、原始卵胞の発育を調節しています。

 なのでAMHの値は卵巣に残っている原始卵胞の数に比例していると考えられています。

AMH

 AMHの平均値は年齢とともに低下していって、閉経近くになると測定できなくなります。

 AMHの値は同じ年齢でも人によってかなりバラツキが大きくて、30歳代で0に近い人もけっこういます。

AMHの正常値

 上のグラフは平均値なので正常値ではありません。AMHには正常値というのは設定されていません。

 正常値とはどういうものでしょうか。AMHの検査をして95%の人が含まれる範囲を正常値(基準値)としましょう。では、その範囲より値の低い数%の人は異常と言えるでしょうか。

 確かに平均値よりかなり低いことになりますが、そういう人でも普通に妊娠できれば異常ではないですよね。

 ではAMHがいくつ以下なら妊娠しにくいというのはあるのでしょうか。

AMHと妊娠しやすさの関係は

 実は、意外とこの関係を調べた論文は多くありません。

 30〜42歳の女性で、AMHが0.7以下の人は0.7より高い人と比べて1回の性交渉で妊娠する確率が5分の2くらいになるという論文があります。

 一方で、20~35歳の女性では、AMHの値と1回の性交渉で妊娠する確率に関連性はないという論文があります。AMHの値と今後1年以内に妊娠する可能性に関係はないという論文もあります。

 いずれの論文それほど多くの症例を集めてた研究ではないので、結論を出すにはもっと大規模な研究が必要になります。

 AMHは原始卵胞の数を反映しているのであって、卵子の質を反映しているわけではありません。残りの原始卵胞の数が少なくても1個質の良い卵子が排卵すれば妊娠する可能性は十分あります。

 極端な話、AMHがゼロだったとしても原始卵胞がゼロとは限らないので、毎月生理が来ていて排卵があるなら妊娠する可能性はあります。

AMHと体外受精

 AMHの値と体外受精の採卵で取れる卵子の数は関係があるという論文が多いです。

 排卵誘発の注射を始める前にAMHを検査して、AMHが低ければ刺激が強いショート法で排卵誘発するというように、排卵誘発の方法を決める判断材料として使われています。AMHが極端に低い場合は、注射をしても多くの卵胞が発育するのが期待できないので、低刺激法を使うことを考えます。

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   AMHの値と体外受精の妊娠率に関しては、症例数の多い研究でも、関連があるという論文とないという論文に分かれます。採卵できた卵子の数が多ければ妊娠の可能性が高まると思うので、AMHが高いと採卵数が多くなることから、妊娠する可能性は高くなるのではないかと思います。

まとめ

 AMHが低くても毎月ちゃんと生理が来ている(=毎月排卵している)人は自然に妊娠する可能性が十分にあります。 ただし、体外受精に進まなければならなくなった場合には、妊娠しにくい可能性があります

 「AMHが低い=妊娠できない」というわけでないですよ。

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