治療

子宮腺筋症は手術で治せる?【産婦人科医が解説】

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子宮腺筋症の手術は難しい

 子宮腺筋症の治療は難しという話はこちらでしました。

子宮腺筋症1
妊活で一番治療に困るのが子宮腺筋症

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 子宮腺筋症が大きくなると妊娠しにくくなります。そんな時、子宮腺筋症の部分を手術で取ると、妊娠出産ができるようになることがあります。

 産婦人科診療ガイドラインには、子宮腺筋症の治療について次のように書かれています。

「子宮温存を目的として子宮腺筋症病巣を切除する手術療法(子宮腺筋症病巣除去術、子宮腺筋症核出術などと称される)が試みられている。症状の改善が得られ、術後妊娠例も報告されているが、現在のところまだ手術の有効性と安全性は確立されたとはいいがたい、妊娠時には子宮破裂を起こす可能性もあるため、臨床成績を集積することが必要である。また、この術式には保険適応はない。根治手術としては子宮全摘術が行われる」

 まだ、一般的に行う治療として確立していないということです。

子宮腺筋症

どんな時に手術をするのか

大きさ

 子宮腺筋症が大きくなると、子宮内膜の血行や環境に影響して着床障害の原因となると考えられます。

 どのくらいの大きさなら手術をした方がいいのかは、わかっていません。

 治療歴・年齢・子宮腺筋症の状態をもとに主治医が個別に判断することになります。

位置

 子宮腺筋症には限局性びまん性があります。

子宮腺筋症

 限局性の子宮腺筋症です。子宮の後ろの壁の一部にだけ子宮腺筋症があります。正常の子宮と子宮腺筋症の部分の境目がはっきりしています。

 このような場合には、比較的簡単に子宮腺筋症の部分をくり抜いて取ることができます。

 ただし、上の写真のような限局性の子宮腺筋症が妊娠しにくい原因になっているかというと、あまり影響なさそうな気がします。

 限局性でも子宮内膜に近いところに子宮腺筋症があると、着床に影響するかもしれません。

 

子宮腺筋症

 このように、正常な子宮と子宮腺筋症の境目がはっきりしないのがびまん性子宮腺筋症です。妊娠しにくいと思われる状態です。

 境目がはっきりしないと子宮腺筋症の部分をきれいにくり抜くのが難しくなります。

 とくにこの症例は子宮全体に子宮腺筋症が広がっているので、普通は手術の対象にならないと考えられます。

このような子宮腺筋症でもごく限られてはいますが、手術を行なっている病院もあります。ただし、これだけ広い範囲を切除した後に妊娠しやすくなるかはわかりません。

 以上は妊娠しやすくするための手術の話でしたが、生理が重いのをよくするために手術をする場合もあります。

子宮腺筋症術後の妊娠

 世界で、2,365件の子宮腺筋症手術例が論文に報告されています。なんとそのうち2,123件が日本で行われています。

 術後に妊娠を希望した人の妊娠率は、17.5~72.7%と報告によってさまざまです。手術した時の子宮腺筋症の状態、術後の治療法などによって、妊娠率が大きく変わると考えられます。

 妊娠した449例のうち363例(80.8%)が出産まで行っています。

 妊娠・出産した症例数が少ないので、子宮腺筋症の状態がどのような場合に妊娠率が高くなるかということは解析できていません。

子宮破裂のリスク

 産婦人科診療ガイドラインにも書かれているように、子宮腺筋症の手術後の妊娠では、子宮破裂の可能性があります。

 前のお産が帝王切開だった、子宮筋腫の手術をしたことがあるなどで、子宮に傷がある場合は、陣痛が来た時に子宮の傷が破れてしまう(子宮破裂)可能性があります。なので、陣痛が始まる前に予定で帝王切開をすることも多いです。

 子宮腺筋症の術後は、帝王切開を予定することになりますが、陣痛が来る前に子宮破裂を起こしてしまうことがあります。

 子宮に傷がない人で子宮破裂が起こる確率は0.005%、前回帝王切開後の人で0.5%くらい、子宮筋腫術後の人で0.3%くらいとされています。

 子宮腺筋症は正常の子宮の壁に入り込むようにできているので、手術で取ると、正常な子宮の壁も一緒に取ることになります。子宮腺筋症をくり抜いた後の子宮の傷を修復するのは難しいことが多いので、子宮筋腫の手術の後と比べて傷が弱くなっていることがあります。

 子宮腺筋症の手術後に妊娠してお産になった363人のうち13人(3.6%)で子宮破裂が起きています。

 帝王切開や子宮筋腫の手術後と比べるとかなり確率が高いですね。しかも、子宮腺筋症術後の子宮破裂は陣痛が来る前の、妊娠20週から35週でも起きるので、いつ起きるか予測がつきません。

 子宮腺筋症術後で子宮破裂を起こした場合、20%で胎児死亡となっています。

手術後の再発

 子宮腺筋症は正常の子宮との境目がわかりにくいので、手術で取り残しがあって再発することがあります。

 また、正常だと思っていた部分にも小さな子宮腺筋症があって、後になってそれが大きくなることもあります。

 実際の再発率は0~50%と報告によって大きな違いがあります。症例数が増えないと正確なところはわかって来ないと思います。

まとめ

 子宮腺筋症の手術は、世界的に見ても日本で多く行われている手術です。とはいえ、ある程度決まった病院で行われているので、できる病院は限られます。特にびまん性に広い範囲に子宮腺筋症がある場合は、できるのはごくわずかな病院です。

  • 手術によって本当に妊娠しやすくなるのかはっきりわかっていない
  • 子宮筋腫の術後と比べても、子宮破裂を起こす確率がかなり高い
  • 手術をしても再発の可能性がある(特にびまん性の場合)

といったことをよく理解しておく必要があります。

 子宮腺筋症の手術をする前には、個々の状況に基づいて、効果とリスクをよく理解する必要があります。

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