体外受精で赤ちゃんを産むことができた人の方が、AMHが高いようですが...
AMHは卵巣に残っている原始卵胞(卵子のおおもとが入っている袋)の数に比例していると考えられています。「AMHは卵巣の老化の目安になる」などと言われているので、AMHが低いと妊娠しにくいというイメージを持っている人が多いようです。
AMHが低いと妊娠しにくいのかを調べた論文はあまりなかったのですが、2018年2月におなじみ「ファーティリティ アンド ステリリティ」に、多くの症例を集めた論文が出たのでご紹介します。
新鮮胚移植の時の生児獲得を予測できる?
このサイトでは何度も出て来ていますが、ちょっとおさらい。生児獲得とは、妊娠が継続して出産(死産ではない)したということです。
この論文では、55,107回の新鮮胚移植を解析しています。
新鮮胚移植後に生児獲得できた人のAMHの平均値が2.78ng/ml、生児獲得できなかった人の平均値が2.01で、生児獲得できた人の方がAMHが高かったです。
基準値を1.18ng/mlとすると、生児獲得した人の76.8%が基準値以上でした。裏を返すと、生児獲得した人の23.2%は1.18ng/ml以下だったということです。
それほど信頼性の高い基準値にはなっていないと思います。
他には、年齢は生児獲得できた人の方が低く、BMIも生児獲得できた人の方が低く、基礎ホルモン検査のFSHも生児獲得できた人の方が低くかったです。
生児獲得 | 生児獲得なし | |
年齢 | 34.0 | 36.6 |
BMI | 25.1 | 25.6 |
基礎ホルモン検査のFSH | 7.5 | 8.3 |
ただし、差はそれ程大きくないので、いくつ以下なら生児獲得の可能性が高くなるという基準値を設定するのは難しいと思います。
凍結胚移植の時の生児獲得を予測できる?
15,458回の凍結胚移植を解析しています。
凍結胚移植後に生児獲得できた人のAMHの平均値が3.49ng/ml、生児獲得できなかった人の平均値が3.21で、生児獲得できた人の方がAMHが高かったです。
基準値を1.97ng/mlとすると、生児獲得した人の61.6%が基準値以上でした。裏を返すと、生児獲得した人の38.4%は1.97ng/ml以下だったということです。
新鮮胚移植の時よりもっと信頼性の低い基準値ですね。
他には新鮮胚移植と同じく、年齢は生児獲得できた人の方が低く、BMIも生児獲得できた人の方が低く、基礎ホルモン検査のFSHも生児獲得できた人の方が低くかったです。
AMHはそれ程気にしなくてもいい?
「AMHは卵巣の老化を反映している」などというのを聞くと、インパクトがあって気にしてしまう人も多いと思います。
今回の論文では、AMHがいくつより高いと体外受精で子供ができる可能性が高くなるのかという、よい基準を設定することはできませんでした。
基準を設定することができないということは、AMHを気にしすぎる必要はないということだと思います。