タイミング療法 治療

病院で行うタイミング法

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超音波を使ったタイミング法【産婦人科医が解説】

 病院を受診する前に、自分でタイミングを合わせる方法はこちらで解説しました。

 生理の周期が毎月同じ人は自分でタイミングを合わせるのも楽ですが、生理が遅れがちな人はタイミングを合わせるのが難しくなります。

 今回は、より正確にタイミングを合わせるために超音波を使った排卵チェックとタイミングの合わせ方を解説します。

超音波による排卵チェック

病院で超音波を使って排卵を予測するのはどんな場合があるでしょうか。

  1.  自然の排卵をチェックする
  2.  排卵誘発剤を使って排卵をチェックする
  3.  人工授精のタイミングをみるため排卵をチェックする
  4.  体外授精のタイミングをみるため排卵をチェックする

などの場合が考えられます。体外受精は特殊なので別記事で説明します。1~3は同じように排卵チェックをしていきます。

自然の排卵のチェック

 自然の排卵の場合には、通常左右のどちらかからひとつだけ排卵します。

 必ずしも左右交互に排卵するわけではありません。右から3回続けて排卵することもあります。1年で考えるとほぼ半々になっていると思います。

 生理の3日目ころには卵巣に小さな(10mm以下)卵胞が数個できています。この大きさに卵胞が育つのに約3ヶ月かかっています。5~7日目になるとその中からひとつが選ばれて大きくなっていきます(10mm以上)。

 10~12日目に受診してもらって、大きくなってきた卵胞を超音波で確認します。卵胞の大きさが20mm以下なら2~4日後にもう一度超音波をします。

 卵胞の大きさが20mmを超えたら排卵の準備が整ったと考えます。ただし、このままだとその日、翌日、翌々日、、いつ排卵するかはわかりません。しっかりタイミングを合わせるためにHCGという注射をします。

 HCGを注射するとそれが引き金になって排卵が起きるので、注射の24~36時間後に性交渉をしてもらいます。

産婦人科医
自然の排卵(特に生理が遅れがちの人)の時は、卵胞が小さめだったのに急に排卵してしまうこともあります。超音波で卵胞の大きさが15mmだったので3日後に超音波に来てもらったら排卵していたなどどいうことがあります。

そんなことを繰り返すようなら、クロミッドを使った方がタイミングを合わせやすくなります

HCGとは(ここは詳しい解説なので読み飛ばしてOKです)

 HCG=ヒト絨毛性ゴナドトロピンです。絨毛というのは胎盤の中にあります。ですので、HCGは妊娠すると出て来るホルモンです。妊娠検査は尿の中のこのHCGを感知しています。妊娠していないときにはありません。

ではなぜHCGを使うのか

 ゴナドトロピンてどこかで解説しましたね?そう、下垂体から出るLHとFSHのことです。

 HCGもこのゴナドトロピン仲間で、構造が似ています。特にLHとHCGはとくに構造が近いため、同じ働きを持っています。LHの働きって?覚えてますよね!LHサージ 。LHサージが始まって36時間後くらいに排卵が起きるのでしたね。HCGを注射すると人工的にLHサージを起こしたことになって、34~40時間後くらいに排卵が起こります。

クロミッドを使った時の排卵チェック

 クロミッドを使うのは、もともと排卵がしにくかった人が多いので、最初の超音波も遅めに(生理の12~13日目くらい)開始することが多いです。

 クロミッドを使っている場合と自然の場合で違って来るのが、HCGを注射するタイミングです。

排卵時の卵胞の大きさ

 このグラフのように、クロミッドを使った場合は卵胞の大きさが25mmを超えたくらいで排卵することが多いです。よって卵胞の大きさが23mmを超えたくらいでHCGを注射して、24~36時間後に性交渉をしてもらいます。

注射の排卵誘発剤を使った時の排卵チェック

 注射の排卵誘発剤を使う場合は卵巣過剰刺激症候群に注意する必要があります。なので自然の排卵の時より早めから頻回にチェックします。生理の8~10日目からはじめて、2~3日ごとにチェックします。

 また次に排卵誘発の注射を開始するときは1回目の状況をみてチェック開始時期、頻度などを決めます。

 注射の排卵誘発剤を使った場合、卵胞が20mmくらいで排卵してしまうことがあるので、排卵チェックで卵胞が18~20mmを超えたらHCGを注射して、24~36時間後に性交渉をしてもらいます。注射の排卵誘発剤を使うと複数の卵胞が大きくなることが多く、卵胞から出るエストロゲンが早く高くなるのでその影響でLHサージが早く起きて、排卵も早めに起きる可能性があります。

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人工授精の時の排卵チェック

 人工授精の場合、HCGを注射した後に性交渉をする代わりに人工授精をします。人工授精では採取した精子を洗浄濃縮して子宮の中に戻します。洗浄した精子は普通の精子より受精する能力のある時間が短くなるというデーターがあるので、HCG注射後早め(24時間後)に人工授精をした方がいいと言っている人もいます。一方でHCG注射後24時間後と36時間後に人工授精したので妊娠率に差がないという論文のあるので、24~36時間後に人工授精をすれば問題ないと思います。

まとめ

 不妊で治療を開始したなら、何度も排卵チェックの超音波をすることになると思います。治療法によって、排卵チェックの開始時期・頻度や、HCGの注射をするタイミングが違ってくるので覚えておいてください。

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